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池谷氏は薬学博士号を持った東大の准教授(当時は助手)です。「薬学系の人が脳科学の本を書けるの?」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、ご安心ください。池谷氏は「脳に対する薬の作用」に興味を持って研究を始めた方で、薬学博士号も海馬の研究によって取得しています。いわば記憶に関する第一人者なのです。
本書は前半部分で最新脳科学が明らかにした記憶のメカニズムを解説し、後半では記憶のメカニズムを踏まえた科学的な記憶力強化方法・記憶力をアップさせる薬などを紹介しています(もっとも、記憶力アップの薬については実用化されていませんが)。
前半部分も非常に興味深い内容なのですが、このブログの趣旨からすれば重要なのは「科学的な記憶力強化方法」を紹介した部分です。したがって、ここでは記憶力強化方法に焦点を絞って紹介します。
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【目次】
はじめに
第1章 脳科学から見た記憶
1-1 タクシー運転手の記憶力
1-2 神経細胞が想像する脳
1-3 人に個性があるわけ
1-4 神経細胞を守るためには
1-5 タクシー運転手の脳は膨らむ!?
1-6 鍛えた分だけ記憶力がつく
1-7 豊かな環境と豊かな記憶
1-8 モリスの水迷路試験
1-9 常識と科学
第2章 記憶の司令塔「海馬」
2-1 記憶の不思議
2-2 記憶の司令塔「海馬」
2-3 進化の歴史が認めた記憶の料理人
2-4 時計回りの金太郎飴?
2-5 リストラか過労死か
2-6 なぜか七個しか覚えられない
2-7 思い出せないのに記憶?
2-8 勘違いも記憶!?
2-9 記憶は歴史の階層
2-10 海馬は何を記憶するのか?
2-11 記憶の倉庫
2-12 「運命」を刻む海馬
2-13 海馬は地図!?
2-14 子供には海馬がない!?
第3章 脳とコンピューターはどちらが優秀なのか?
3-1 ネットワークを作る神経細胞
3-2 神経回路と電気回路
3-3 信号の乗換駅「シナプス」
3-4 シナプスの仕組み
3-5 一方通行のシナプス
3-6 シナプス電位と活動電位
3-7 シナプスは考える
3-8 シナプスという名の精密機械
3-9 脳とコンピューターはどちらが優秀なのか?
第4章 「可塑性」――脳が記憶できるわけ
4-1 「青」進め!「赤」止まれ!
4-2 失敗は成功のもと
4-3 脳はいい加減なヤツ
4-4 道を究めて達人になる
4-5 脳が記憶するとき
4-6 人間が人間である理由
4-7 路線図か時刻表か
4-8 ある哲学者の記憶
4-9 ヘブの法則
4-10 夢かまことか
第5章 脳のメモリー素子「LTP」
5-1 LTPの発見が世界を変えた
5-2 耳をそばだてるLTP
5-3 LTPこそが脳の記憶なのか?
5-4 SFの世界が現実になった日
5-5 鏡の世界のLTP
5-6 情動が作る思い出
5-7 夢の続き
第6章 科学的に記憶力を鍛えよう
6-1 覚えられないのか、それとも覚えないのか
6-2 無駄な勉強法
6-3 記憶のビタミン
6-4 心の余裕は記憶に毒?
6-5 記憶力を増強してストレス解消!?
6-6 なぜ東大に合格できるのか?
6-7 勉強はほどほどに!?
6-8 寝る児は育つ――「夢」の不思議
6-9 平均的人間はダメ人間!?
6-10 天才の秘密
6-11 記憶することは人の運命
第7章 記憶力を増強する魔法の薬
7-1 記憶力のドーピング
7-2 賢いネズミの誕生
7-3 肝臓と記憶の不思議な関係
7-4 記憶力とは何か?
7-5 記憶力が失われる恐ろしい病気「アルツハイマー病」
7-6 楽しく酒を飲みましょう
第8章 脳科学の未来
8-1 豊かな将来
8-2 他人の脳をもらう
8-3 科学が「心」を理解する
8-4 なぜ海馬なのか
おわりに
参考文献
【内容紹介】
・年のせいで覚えられなくなる?
記憶には階層がある
=〈手続き記憶→プライミング記憶→意味記憶→短期記憶→エピソード記憶〉
年齢とともにこの順番で発達していく
⇒子供のころは意味記憶(知識の記憶力)が発達しているがエピソード記憶(論理立った記憶力)が未発達なので、論理的に説明して記憶させるよりも丸暗記が有効
⇒年をとるとエピソード記憶が発達してくるので、「ものごとを理解してその理屈を覚える」という論理的な記憶方法が有効になる!
⇒有効な記憶の仕方が変わっただけで、記憶力そのものが落ちてるわけではない!
・理解の重要性
事象同士が連合されれば、通常よりも弱い刺激で、LTPという記憶に関係する反応を引き起こすことができる
=ものごとを関連付ければ覚えやすくなる
=法則を理解したものほど記憶しやすい!
・語呂合わせの有効性
意味のないものを覚えるには、語呂合わせを声に出す
⇒進化の歴史上、視覚が発達したのは最近のことなので、聴覚の方が記憶に残りやすい!
語呂合わせの言葉の意味を具体的に想像する
⇒イメージと関連付けて記憶することになるので、記憶しやすい
・エピソード記憶の簡単な作り方
自分の経験に結びつけて記憶すると「エピソード記憶」となるので、忘れにくく思い出しやすい
⇒覚えた知識(意味記憶)を他人に説明する!
⇒「あのとき教えたところだ」「こういう図を描いて説明したな」というように、体験に結びついたエピソード記憶になる!
*理解しなければ説明できないので、自分の理解を確認できるという副次的効果も
・復習の重要性
エビングハウスの忘却曲線
=文字の羅列を20個丸暗記させても、次の日まで覚えている数は40%程度。しかし、2回3回とテストを繰り返すと、覚えている割合が高まる
⇒1回目のテストで思い出せなかった文字列も、潜在的記憶として脳に蓄えられている
⇒潜在的な記憶が脳に蓄えられているのは一ヵ月程度
⇒覚えてから一ヵ月以内に復習すると、脳が重要な情報だと判断して記憶してくれる!
・睡眠の重要性
夢=過去の記憶の整理
⇒記憶は夢を見ることによって保存される!
⇒新しい知識や技法を身に着けるには、覚えたその日に6時間以上眠る必要がある!
⇒一度にまとめて勉強するよりも、数日かけて間に睡眠を挟んだ方が覚えやすい!
【感想】
学生時代の私のバイブルでした。それまで睡眠の重要性やエビングハウス忘却曲線など知らなかったので、この本を読んだときは目から鱗が落ちまくり。友人に勧めまくった記憶があります。
なにしろ6年前の本なので、記憶力強化方法に関して新しい情報がないと思う方もいるかと思いますが、「なぜそうすべきなのか?」という根っこの部分が記憶のメカニズムから科学的に説明されている本は、現在でもそれほどないように思います。
この記事では記憶力強化方法に焦点を当てましたが、記憶のメカニズムそのものに興味がある方だと、本書をより楽しめると思います。
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